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2007年08月30日

学位商法

夕刊で、読売、日経、東京の在京3紙さんが、文部科学省による学位商法の実態調査について報じてくれました。まさに、全国津々浦々まで、学位商法の存在と問題性が伝わったのではないでしょうか。
題材を取り上げたきっかけは、ある地方教員の「ニセ学位が日本で野放しになっている。許せない」という怒りの声でした。ディプロマ・ミル(ディグリー・ミル、DM)という言葉もこのとき、初めて聞きました。

 帰京して取材を開始したところ、出るわ出るわ。海外の大学を名乗りながら、実態の分からない、あるいはほとんどない教育機関が無数にあり、自営業者だけでなく、教員までがその「学位」を堂々と掲げているのが分かりました(もちろん、取材した中にはニセ学位とまでは言い切れないものがいくつもありました)。
 日本で知らない人がいないくらいの有名人や財界人、政治家が、そのような「学位」に手を出し、広告塔として利用されているケースもありました。しかも、その事実を国民の大半は知らないのです。私は、非常に危険だと思いました。

 学位商法の危険性については、紙面やこのブログで度々述べてきましたが、私にとっての最大のポイントは、モラルハザードです。DMは人々の心を荒廃させます。

 まじめに勉強して学位を取得した人や、虚偽に近い宣伝文句を使わずにまじめに商売をやっている人が損をすることが黙認されるなら、まじめに生きるのがイヤになる人が出てくるでしょう。まさに、「バレなければいい」「違法でなければ何をしてもいい」・・・といった論理の温床の一つです。
 私たちマスコミの人間や政治家、行政が、「そんな学位を持っているヤツはどうしょうもない」とか「騙される方が悪い」とか「具体的な被害者がいない」などと言って、この問題を切り捨ててしまっていいのか。そうやって見下して野放しにしている間に、まじめな人間が得るべきポストを得られず、売れるべき商品を売れないということになれば、日本人のモラルはどうなるのか・・・。大げさにいえば、こんなことを考えて取材をしてきました。 

 産経新聞が学位商法問題の記事を掲載し始めてから、フジテレビさんは以前からの仕込みもあり、問題の核心を突く素晴らしい報道をしました。そのほかは、5月に日経新聞さんが「文部科学省が近く実態調査」と打つまで、全国紙やキー局は沈黙したままでした。一方で、ローカルラジオ・テレビ局、ローカルペーパー、地方の大学の講義などでは「知る人ぞ知る」的広がりを見せていました。

 「産経新聞が独走しているので、他社は後追い報道がイヤだから報じないのではないか」と指摘してくれた同僚もいました。確かに、もし私が逆の立場だったら、同じように行動した可能性が高いと思います・・・。スクープ合戦の弊害は今日始まったことではありませんが、つまらない意地を捨て、切り口を変えるなりして問題を提示するのが読者への誠意というものではないかという思いを強くしました。
 今回、共同通信は夕刊用に記事を配信したため、夕刊のない産経新聞は他紙に半日遅れて翌日の朝刊に記事を掲載しました。「誰が一番早く書くか」という勝負にこだわるなら、産経新聞は負けたのかもしれません。ただし、「誰が一番早く知ったのか」という勝負の結果は、誰にも分からないことです。そして、産経新聞にとっての「勝ち」はなんだったのか・・・。
 私が言うまでもないことですが、他社との「早打ち競争」より大事なものを忘れた報道ばかりしていると、マスコミはいつか国民の信頼を失うことになるという思いも強くなりました。

 さて、今秋には文部科学省が調査結果を発表する予定です。少し先走りますが、教育界に学位商法が浸透している実態が浮き彫りになるはずです(ゼロだったら問題です)。もちろん、全教員に占める割合はほんのわずかだと思いますが、最高学府の教員がそんなものに手を出していたという事実は極めて大きな意味を持つと思っています。

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